藤堂高虎が、伊賀を治め始めた頃であろうか。
ある時、出入りの商人が高虎のもとを訪れ、うまい話を持ちかけた。
「私は、伊賀国の塩を一手に扱いとうございます。
つきましては、もしうちに塩の専売をお許し頂ければ、
毎年銀五百枚を税として上納いたしますが、いかがでしょう?」
それを聞いた高虎は言った。
「お前は我々に物をくれて、我々はお前に金を与える。
そもそもお前はそうして暮らす者であろう。
それが、逆にお前が我々に金を過分にくれるとは、どういうことか。」
「塩を専売させて頂ければ・・・、のお話でございます。」
「塩を専売させれば、塩の値が三倍、四倍になったところで、
領民は他所で買うことはできぬ。
お前は我々に毎年五百枚の銀を納めたとしても、
千枚、万枚の利を得るというわけであろう。
これは、お前と我々が一緒に泥棒を働くのと同じことだ。
領民に迷惑をかけて、なんで商人を儲けさせられようか。
領民を不幸にすることは、誰が損をすることになると思うてか。
このような願い出をする者は、即刻、伊賀国を立ち去れ!」
高虎は、商人を激怒したという。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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