天正13年、秀吉の四国攻めでの話。
豊臣秀長は阿波の木津城を攻めていた。
この時、秀長の軍にあった藤堂高虎は秀長に奨め、軍を分け同国一宮城を攻めた。
この一宮城攻めにあたり高虎は深夜、家臣の服部竹助一人を連れて、
堀の水の深さを測るため堀のすぐ近くまで忍び寄った。
と、城中でこれに気が付き、高虎の方に銃撃が成された。
そしてその内の一発は、高虎の胸先に命中したのだ!
これに高虎は、その場で動かなくなった。
驚いたのは服部竹助である。後ろから高虎に向かって囁いた。
「い、いかが致しましたか!?」
その瞬間、顔面に強烈な衝撃。竹助は吹っ飛んだ。
「黙ってろ!」
竹助の頬を、高虎の猛烈な肱打ちが当たった。
夜の暗さのため城兵には未だこちらの様子は解っていない。
しかし声を出されては再び敵の射撃の的になると考えたのだろう。
高虎、とっさの危機回避であった。
そしてこの肱打ちにより服部竹助は奥歯を二本折ったそうだ。
恐ろしい威力である。
そうしてなんとか陣に帰り、高虎が具足を脱ぐと、鎧と具足下着の間から銃弾が落ちた。
そして高虎の胸は、四、五寸(15センチ前後)四方ほど、
丸く、赤黒く腫れ上がっていたそうである。
後に服部竹助はこの時の強烈な肱打ちについて、
「強かった。あの強さを言葉で表すのは非常に難しい。」
と、それによって折られた奥歯を見せつつ語ったそうである。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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