主君替え、五人目☆ | げむおた街道をゆく

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信長の野望、司馬遼太郎、大河ドラマが大好きです。なんちゃってガンダムヲタでもあります。どうぞよろしく。

 

馳走するというので訪れた、林次郎兵衛宣清の家で、
与右衛門に振舞われたのは、大好物の鮒寿司であった。
大喜びで鮒寿司を頬張っていると、表で馬のいななきと男の声がする。
「もしや、追っ手か?!」
とっさに与右衛門は身構えた。

心当たりは・・・・ありすぎる。
 

「慌てるな。小一郎様からのお使者じゃ。」

羽柴小一郎秀長が与右衛門に会いたいという。
秀長の屋敷に向かう道中ももどかしい。
「もしかして。」
与右衛門の期待は、否が応でも高まった。


会うなり、秀長は与右衛門を見上げて言った。
「三百石でどうじゃ。
まずは仕事ぶりをみてからじゃ。働き次第で加増するぞ。」
昨日まで八十石でがたがた言っていた与右衛門である。
一も二もない。
「よろしくお願いいたします!」

以来、十五年。
与右衛門は、影に日向に秀長を支えた。
秀長は、腕っぷしはもとより、打てば響く与右衛門を頼みとした。
秀長が約束をたがえることはなく、戦功を重ねる与右衛門はやがて、
粉河一万石の城持ちになった。
名は高虎と改めた。

縁起物として鮒寿司は、藤堂家の祝い膳に必ず出されるようになったという。


築き上げた確固たる主従関係は、秀長の病死をもって解消される。
秀長は養子・秀保と大和大納言家の事後を高虎に頼んで、世を去った。

高虎は家老である。
守るべき新主君は若干十八歳。高虎はいつまでも泣いていられなかったのである。


後年、秀長の墓の荒廃ぶりを嘆いた高虎は家康の許可を得て、
大徳寺大光院にそれを移した。
江戸年間に大光院が焼失すると、藤堂家が再建したという。

 

 

 

戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。

 

 

 

こちらもよろしく

→ 下天を謀る・異聞、藤堂高虎

 

 

 

ごきげんよう!