姉川の合戦での手柄を、主君・浅井長政から誉められて、いい気になってるだの、
図体のでかさと怪力を妖怪よばわりされるだの、とかく中傷は半端なかった。
よほど腹に据えかねたのか、17才の藤堂与右衛門は、
噂を吹聴する山本嘉助と対峙し、
これを切り捨ててしまった。
「・・・もはやここにはいられまい。やがて追っ手がまいるだろう。」
与右衛門は、着ていた紺地に大紋の羽織を脱ぐと裏返し、
茶色に無紋の羽織にして再び羽織った。
(リバーシブルだったわけだ)
そしてその場を立ち去った。
まもなく、嘉助の死を知った追っ手が与右衛門を躍起になって探し始めた。
与右衛門の着ていたはずの紺地大紋羽織を手がかりに、聞き込みを行う。
「紺地に大紋?見かけねえなあ。茶に無紋羽織ならいっぱいいるけどよ。」
流行色だったのである。
藤堂与右衛門高虎は慌てた素振りも見せず、悠々と逃げおおせ、
二番目の主君阿閉氏の門を叩くとになるのである。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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