血だまりの中で、息も絶え絶えになっている阿閉那多助と広部徳平を眺めながら、
与右衛門はつぶやいた。
「もはやここにはいられまい。やがて追っ手がまいるだろう。」
浅井家では同輩を切り殺して出奔したが、
ここ阿閉家では先輩格の中間を、しかも二人も殺してしまった。
ちっとも学習しないこの男が、どこをどう逃げたかなど、
もはや誰も書き残そうとはしなかったらしい。
唯一の救いは、殺された中間二人は素行の良くない、
荒くれ者だったということだ。
肌身離さず持っていた感状が功を奏してか、三人目の主君磯野丹波守員昌への仕官は、
比較的スムーズではあったようだ。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
こちらもよろしく
ごきげんよう!