三家については、以上の通りであり☆ | げむおた街道をゆく

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上杉景勝公は、石田三成と陰謀を示し合わされた。

「石田三成が上方に於いて逆謀の色を顕せば、

諸国より三成と内通していた者達が打って出て、
徳川家康と取合いを始めるだろう。

私はそれを聞いて兵を発し、奥羽筋を打って上方と首尾をあわせるべきか。

であれば、仙台の伊達政宗、出羽の最上義光、越後の堀秀治、

この三人は燐競にて大身であると雖も、三人共にこの景勝の、物の敵とは思われない。
 

何故ならば、

一に、堀久太郎(秀治)は昨今の若将であり、弓矢の術を知らず、

家法正しからずして家中は二、三に割れ、殊に上方風であり。

押し掛けには強いが後道に弱く、領民は堀家の新仕置に飽きはて、
古主である上杉家を慕っている。
また堀家を取り立てた太閤の御厚恩を忘れて家康に従う不義の兵であるから、

これを踏み潰すに手間はいらないだろう。

二に、伊達政宗は久しき家では有るが、その父である輝宗より二代に渡って境争い、

坪弓箭をも賢く取り、政宗一身の覚悟も無類で、能き大将である。
しかし家中は前代の悪風儀に慣れ、我儘を仕る士共は、現代の新仕置を迷惑がり、

それを実行しようとすと、手荒き政宗であるとし、心で疎み身を虚しくして。

家中は意志が一致していない。

また大敵であると言っても上杉家と比べれば小身である。

七手組の頭が、一両備えで押し向かえば、
政宗が手を出すことは出来ないだろう。
殊に政宗の心の有り様は、弓箭の正道について誠の吟味も入れようとせず、

ただその時節に任せて敵にも成り味方にも成り、

自分の家を恙無く相続する事こそ至高であるとの奥意であるから、
我が方に少しでも強みがあると判断すれば、すぐに手のひらを返し当方に頼み従うだろう。

三に、出羽の最上(義光)は数代相続の家であるが、

弓箭について然りとするような誉れが無く、
身にかかる火を払うばかりにて、他国遠国へ取り掛かるような武道のこだわりも無く、
家中の者共は事毎に居丈高にばかり仕り、武功誉れの者が有っても、

新参譜代筋どちらでも、小身であれば家老や出頭人の前では頭を挙げさせぬ故に、

彼らが十考えている内三、四を言ってすら、
家老や出頭人の威に押され、一言を躓いただけでも善悪の批判を受ける。

そのため言葉少なく手短に計り言おうとして、その理屈が伝わらず、

四つ言ったとしてもその内三つはみな戯言となり、

残った一つの理も、相手には生聞こえとなり、

それを言った人物が不合点者と取りなされる。故に以後は控えて物も言わなくなる。

或いは、いかほど能き者であっても、口が不調法であっては面出しも成らぬ。

故に下の理が上に達しない。

最上家中では新参であっても大身であれば、譜代を押しのけ上座に在り、我意を振る舞う。
元より古参にて大身であれば、心は鈍くても我儘に口をきく。
執権に於いてこのような国法なのだから、軍法も未練なものであろう。

であれば、上杉家に対せば手に立つような事はない。

三家については以上の通りであり、であれば、石田が上方にて兵を起こせば、

私は奥北国を討ち靡かせるか、でなければこの大身の三家には押さえを置いて、

家康の持つ関東へ働き出れば、常陸の佐竹を始め当方への志の衆、

東国にも多いのだから、攻め上がり家康を取り挟んで、
一戦を遂げれば勝利を得るだろう。」

 

 

 

戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。 

 

 

 

こちらもよろしく

→ 不識庵以来の軍法、上杉景勝

 

 

 

ごきげんよう!