ある夜、黒田家の吉田の家に、菅と津田が来て飲んでいた。
そのうち誰からともなく、
「今から殿んち遊びに行こうぜ!」
という話になった。
もう真夜中、雪まで降っていた。
「今から家来を起こして下駄の用意させるのも悪いよなあ…裸足でいいか。」
行かない選択肢はないらしい。
真夜中に主君を叩き起こすのはいいらしい。
急に行って酒の肴がないのもいやなので、一応自分たちでも用意することにした。
ザルに適当にその辺にあった豆腐を二丁入れる。
酒が入ってハイになっているのかそれともそんなの関係ないのか、
裸足でかけてく、吉田長利、菅正利、津田貞俊。
こうして、酔っ払いが訪ねてきたという報告を受けた長政は、
寝床から起き出してくるはめになった。
ただし長政本人は一人寝が淋しかったらしく、
「いいとこにきた。」
と喜んでいたそうだ。
「酒は昨日ついたばっかりのが樽であるんだが、肴になりそうなものはあったかな、
まあいいや、台所探してみろ。」
家探しの許可を受けて一同があちこちひっくり返すと、
戸棚の中から骨付きの鯛が出てきた。
「いいねえいいねえ、焼いて食おうか。」
ところが盛り上がる彼らに、長政が待ったをかけた。
「待てよ、明日は28日だな…これは多分明日使おうと思ってとってある分だと思うんだよ。
明日の朝、料理方の連中が魚が消えてるのに気づいたら困るんじゃないか。」
「あーたぶんそうっすねー。」
「じゃあ、豆腐持ってきたからこれでいいや。」
こうして三人は自分たちで火を起こして酒を温めると、
鶏が鳴く頃まで散々おしゃべりして、帰っていったとさ。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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