黒田長政があるとき、このようなことを語った。
「若き者共30人を、未だ戦場に召し連れないうちに、
3種類に見積もって試したことがある。
先ず、最初の10人は、見るからに男ぶりも健やかで才覚もあり、
必ず優れた働きをすると思う者達。
次の10人は、見るからに才覚も鈍く、男ぶりも手弱く、
中々物の役には立たないだろうなと思われる者達。
最後の10人は、豪胆でもなければ特に臆病という程でもない、
ただ人並み程度だなと思う者達。
さて、この30人を戦場に臨ませてみたところ、
最後の豪胆でも臆病でもない10人は、10人共に違いなく、逃げもせず、
かといって優れた働きもなく、まったく平均点という事であった。
最初の、見るからに優れていると目利きした10人は、10人中8,9人は思ったとおりに、
大いに優れた働きをした。
ところがどういうことか、そのうち一人もしくは二人は、
思いの外、大臆病者である場合がある。
そして見るからに用に立たないと目利きした10人であるが、
これも8,9人は目利きした通り役に立たないのだが、
その中に一人か二人、比類なき大剛の者があって、
先の優れ者と目利きした者達に勝るほどの手柄をし、
戦場においてはそれまで見られなかった才覚まで、備わっている者がある。
この一人二人は、目利きの外にあるのであろうか。
それとも、私の目の及ばない、深き所に、
大剛大臆病の気というものはあるのだろうか。」
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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