黒田長政は、福岡城の松本坂門の櫓に、毎夜側近二人を置いていた。
ある夜、城に盗賊が侵入して、城内が騒然としたことがあった。
この時、櫓に人影を見つけた勤番二人が賊を押えると、
18歳ほどの青年だった。
これに喜んだ長政は、二人を100石ずつ加増した。
一人は150石、もう一人は100石の小身なので、思った以上の加増に驚いた。
このことを聞いた家臣たちは憤った。
なぜ若造一人を二人がかりで捕まえたぐらいのことで、
あそこまで加増するのだ。
これでは敵の首級を挙げた時は、
いったいどれほどの加増をすればよいのだ、と誰もが思った。
長政はそのわけを話した。
「わしはいつも城内の警備を万全にしろと言ってきた。だが、この有様だ。
お前たちは二人がかりで若者を云々言っているが、
それは捕まえてから分かったことではないか。
常に用心されている場所に侵入する者は、いざとなると何をするか分からない。
なのに、あの二人は賊が入ったと聞いて躊躇いなく飛び出し、賊を捕らえた。
ということは相手が何十人だろうと躊躇わずに飛び出しただろうということだ。
この心がけは一番槍に匹敵する功績ではないか。」
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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