忠之の袴着式☆ | げむおた街道をゆく

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黒田長政の嫡男・満徳丸(のちの忠之)が4歳になり、

初めて袴をつける袴着式を行った。

母里太兵衛友信が、”じいや”として満徳丸に着付けてやり、儀式は滞りなく進んだ。
「良きお子じゃ。早く成長して功名を挙げ、父上以上の武士になりなされ。」

それを聞いた長政は、顔色を変えて太兵衛をののしった。
「やあ太兵衛、何を言いおる!

4歳の子が『父以上の武士』とはどういうことじゃ!!」
ついには太兵衛を罰すると言い出したため、

周囲がとりなしたが、長政は聞かなかった。

「これが許せるか!

わしは若き時、お前にも(栗山)備後にも謀らず、

朝鮮に渡って功名を挙げ、関ヶ原でもお前たちの助けに寄らず、大敵に勝った。
泰平の世となり、立てるべき武功もない今、

どうして満徳がわしを超えるなどできよう。
太兵衛よ、納得の行くよう説明せよ!」

群臣が手に汗握る中、太兵衛は長政を無視して、笑って満徳丸に語った。
「いいですかな、武功は幾たび事に及んでも、

『これで良い』ということはありません。
他人に『貴殿の功、比類なし』と、ほめられても聞き捨てられよ。

よく訓練された兵を率い地の利を取って勝ったとしても、

それは自讃に過ぎませぬ。
勝ちに狎れて、次の戦で同じことをしても、必ずや負け戦となるでしょう。

だからと言って、味方の崩れを防ぐためと、殿様が前に出るのは大将の道にあらず。
殿様の武功が進むのも結構ですが、それでは殿様を守るため、周りの者が死にまする。
人を良く使い、味方を討たせず勝つのが、本当の良将というものでござる。

爺の言葉の正否は、わしがこれで死んだ後は、栗山が老巧の者ゆえ、お尋ね下され。
くれぐれも言いますが、満徳さまがただ一人駆けるような事は、葉武者の業ですぞ。」

痛烈な皮肉に、長政が次の言葉をかけられずにいると、

騒ぎを聞きつけた栗山備後が銚子と杯を持ってきて、長政に勧めた。

酒が入って少し打ち解けた長政は、
「乱心者よ、これへまかり出でよ。」

と、太兵衛を呼んで酌をしてやった。

杯を受けた太兵衛、

「殿が由なく怒られて、祝いの興が冷め申した。少し酔いなされ。」
平然と言い返し、主君に酒を勧めた。

これを見て取った栗山が、群臣に呼びかけた。
「皆の衆、ようく見よ。思慮なきも謀・情け深きも、われらが殿なり。

大たわけも頼もしきも、太兵衛なり。

両雄そろう黒田の家の武勇めでたきぞ!」

栗山の呼びかけに一同わきかえり、何事もなかったかのように祝宴は続いた。

「太兵衛、座興じゃ。」

すっかり酔った長政は、ついに歌い踊りだした。
「これは、鬼が稽古せしか!」
家臣一同笑い転げ、祝宴は盛況のうちに終わったという。

 

 

 

戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。

 

 

 

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→ 関ヶ原の功労者、黒田長政

 

 

 

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