細川忠興と言えば、利休七哲としても有名な、茶の達人であった。
そのため、彼に弟子入りを望むものも多かった。
ある大名が、忠興に茶の湯の指南を頼んだ。
すると忠興は、
「師弟の約束の前に、武士の茶の湯の大事を、
今から伝えるので聞いていただきたい。」
と言う。
「昨今の茶の湯を見ると、おのおのの家職を忘れ隠遁者を気取っている。
特に武士の癖に、茶の湯に熱中するあまり武道をおろそかにしているものすらいるが、
これはまことに怪しからぬ。
不肖、この三斎が考える武士の茶の湯とは、かようなものでござる。
先ず、第一に自分自身の武道を日夜怠らず、たった今、どんな事が起きようが、
他人に遅れず一番に出陣し、
敵が幾万あろうが自分ひとりで突き崩すほどの気概を持ち、
家中下々にまで武芸を訓練させ、人馬は勿論、
武具、馬具を普段から不足のないように心がける。
その上で、あくまでその上で余暇があれば、その時に茶道の閑静幽雅を楽しむ。
これこそが武家の茶の湯でござる。よくよく心得るように。」
忠興さんの茶の湯は、並大抵ではないのだ。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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