細川忠興が、公儀普請を仰せ付かった時のこと。
忠興は家臣の加賀山権左衛門に、その普請の見積り計画書を作らせた。
加賀山は仔細に検討した綿密な見積りを作るが、それを忠興に提出する前に、
この普請自体が中止になり、当然、加賀山の作っていた見積りも、
もはや不必要と言う事になってしまった。
しかし、忠興の近習の者達は、
「加賀山は実に見事な仕事をしていたのに、これをなかった事にするのは酷すぎる。」
と、その見積書を忠興に見せた。
忠興はそれを見て大いに感じ入り、その夜、加賀山を招いて、
「無駄にはなってしまったが、見事な仕事をした。」
そう申し述べ、千石の加増を約束した。
ところが加賀山、翌日さらに忠興に呼び出された。
何事かと思って御膳に出れば、
「加賀山、昨晩はお主に千石加増などと言ってしまったが、
あれはわしの目利きが違っていた。
あれからお主の見積書を仔細に確認してみた所、
そなたの作った見積りは、
そのすべてにおいて完璧であった。
普請がなくなったとはいえ、これだけ詳細なものを作り上げた事、
これは普請を勤めたのと同じ事である。
またこれは、今後も普請の見積りを作る際の手本となるであろう。
これほどの仕事をしたお主の手柄は、千石では足らぬ。
後日更なる加増を約束する。
今日はわしの不明を謝りたくて呼んだのだ。」
家臣の無駄になった仕事を評価し、
さらに評価し足らなかった事も反省した、忠興公のお話。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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