細川忠興といえば、甲冑作りの名人としても歴史に残る存在である。
将軍・徳川秀忠も、忠興に兜を作るよう依頼した。
しばらくして忠興、完成した兜を持って参上する。
土井利勝の手に渡され秀忠の前に置かれた、
真新しい兜のデザインは、角頭巾の形状で、その角がキッと立った形。
その斬新かつ洗練された造形に秀忠も大いに満足し、
忠興を傍に召して様々に褒めたたえた。
が、秀忠には一つ疑念があった。
「この兜の忍の緒であるが…、これは練絹を紐にしたものを使っているな?
しかし忍の緒には麻布を紐にしたものを使うのが良いと聞き及んでいる。
練絹の紐であっても良いものなのか?」
「フフフ…。」
忠興、不敵に笑う
「さすが上様、そこに気がつかれましたか。
しかし私がこの様なことを知らずにやっているとでも?」
と、懐から桐の箱を取り出しそれを開いた!
その中には…!
土井利勝、「ああーッ?上様あれはッ!」
秀忠、「うむッ!麻布の紐ッ!」
「兜に練絹の紐を付けたのはあくまで兜進上のご祝儀としてのこと!
忍の緒は肌に直接着けるものであるゆえに、
ここに別に用意しておいたのですッ!
只今より私の手で、この場で付け替えをいたしましょう!!」
「流石は忠興である!」
秀忠さらに喜び、大坂の陣にはこの兜をつけて出陣したと言う。
細川忠興、抜かりの無い男なのである。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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