将軍家光の命により、京・二条城の改装を、小堀遠州が担当することになった。
油断なく造作の指図をする遠州のもとを細川忠利が訪れ、
知人の来訪に遠州は挨拶した。
「これは細川殿、良くお越しで!」
「はい?」
「………げ。」
そう、『細川』は二人来ていた。
家光の依頼で、名高い数寄者の細川三斎も見に来たのだ。
普段は師匠の織部と同門(つまり格上)で、
自分の茶の湯に批判的な三斎を煙たがって、
江戸城中などでは避けている遠州だったが、顔を合わせた今はそうも行かない。
「こ、これは三斎殿も良くお越しで・・・。」
遠州は三斎の批判を恐れ、三斎が見て回るのについて行ったが、三斎は、
「さてさて、結構なるものかな。」
などと言いつつも、どこが結構なのか全く言おうとしなかった。
見かねた忠利が苦笑しつつ、
「父上、遠州殿が・・・。」
と三斎に何度も声をかけたが、これも無視。
たまりかねた遠州は、散々な思いで細川親子のもとを離れた。
社交人の忠利が、今一度父親に、
「遠州殿をお見忘れか?」
と聞くと、三斎ようやく、
「ああ、あの袴腰が大きくて背に当たってる男かい。」
と答えたという。
ちなみに『袴腰』とは袴をはいて帯を締めた時、後ろ側の背に出っ張る部分を言う。
つまり、三斎と見れば逃げて行く遠州は後ろ姿しか印象に無いわ、という
ファッションリーダーの三歳様らしい、イヤミの話。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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