天正7年(1579)3月、宇喜多直家は、美作三宮城を攻めたが、
城主・村上勘兵衛はみずから60騎を率い討って出る剛の者で、
なかなか勝負がつかなかった。
直家は明日こそ城を落とさんと、若手の足軽大将ら4人を呼んで策を授けようとしたが、
隣室でこれを聞いていた、家老の岡平内利勝が進み出た。
「殿が弓を取られて以来、大事の謀を戸川、長船、
そして私に明かされぬことはなかった。
しかるに此度、若い者どもと謀を成すとは、誠に心許なし。
この上は、明日我ら城に討ち入り、村上が首を取ってお目に掛けるべし。
首を取らずんば、生きて再び帰りませぬ!」
自陣に戻った利勝は、先駆けするには身軽でなければ、
と思い家臣の半井原某を呼んだ。
「おい、オレの鉄の脛当ては重くていかん。お前の脚絆を貸してくれ。」
「お断りします。利勝様は、城中まで騎馬で行けばよろしかろう。
私は徒歩で行くのです、鉄の脛当てでは不自由です。」
翌日、仕方なく鉄の脛当てを着け出陣した利勝は首尾よく、
村上勘兵衛と遭遇して渡り合い、勘兵衛を押さえつけた。
その時、勘兵衛の妹が長刀で利勝の足に斬りつけたが、
鉄の脛当てのおかげで無事に済み、
そのスキに追いついて来た半井原が彼女の首をはね、
利勝は勘兵衛の首を挙げた。
城将の首を見た直家は苦笑しつつ、
「また利勝が手柄を立ておった。」
と褒め、また、
「脚絆を借りず、長刀の難を逃れたのは運が良かったからだ。
半井原は一人、利勝の供をして難を救い、良く働いた。」
と言い、二人に感状と褒美を与えたという。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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