永禄年間の事。
宇喜多直家は、税所元常が城主を勤める竜口城を攻めあぐねていた。
そこで一計を思いつき、
謀臣・岡郷介を呼んで、耳打ちをした。
さて数日後、直家はこう叫んだ、
「郷介は罪を犯した!からめ取って殺せ!」
しかし岡郷介は既に、出奔したあとであった。
その頃、郷介は隣国の備中に隠れていた。
そして西郡の道で物乞いをしている乞食の老女を見つけると、
「母上!あなたは生き別れの母上ではありませんか!」
そういって無理やり老女を連れ帰った。
乞食の老女は美しい着物に召使までつけられ、
たちまち豊かになった。
そうしてから郷介は、竜口城に近い船山城主・須々木筑前に仕える事になった。
実母と偽った乞食女を、人質として差し出した。
しばらくして郷介は、船山城から馬を盗み出し城から逃げ出した。
城内の者たちが、
「待て!帰って来い!」
と追ってくるが、かまわず、須々木と敵対関係にあった、
竜口城・税所元常の元に逃げ込んだ。
「私は船山城主、須々木筑前の家来ですが、
理由も無く死罪を申し付けられたので逃げてきました!」
怒った須々木筑前は、人質の乞食女を磔にした。
「母上を!この恨みどうして晴らせば!」
嘆き悲しむ岡郷介に、税所元常も同情し、心を許した。
元来有能だった郷介が、元常から、
はかりごとの相談を受けるまでになるのに、時間はかからなかった。
ある日、郷介は、密書を直家に送った。
その夜、竜口城の秘密の謀議をする場所に、
元常と郷介の二人だけが入っていった。
郷介はそこまで信頼されていた。
が、郷介はそこで、後ろから組み付き刀で元常を刺し、首を討ち取ると、
打ち合わせどおり、
直家が密かに用意した船に乗り、そのまま直家の元に帰っていった。
城主が死んで混乱した竜口城を、宇喜多軍はやすやすと攻め落とした。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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