ある時、中村伯耆守(一忠)より、神部甚右衛門という者が使者として、
福島正則のもとに派遣された。
正則は彼に直に対面すると、盃を出し甚右衛門に盃を指した。
甚右衛門はこれを頂戴すると、臆面もなく一杯を飲み干した。
正則も上戸であるので、この甚右衛門の飲みっぷりを殊の外気に入り、
「その盃を返杯してくれるか?」
「畏まり候。」
そうして正則も酒を飲み干すと、甚右衛門に二杯目を進める。
そして肴を挟んだ後、さらにもう一杯盃を指した。
この時、正則は中村伯耆守への返事に、
『今後私の方に御使者を遣わされるときは、
必ずこの甚右衛門を下していただけますよう。』
申し入れた。
その後、中村伯耆守が病死し、中村家が無嗣断絶となったとき、
この神部甚右衛門を、福島正則が召し抱え、三百石にて供番となった。
人々はみな、くだんの酒のよしみであると語り合ったという。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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