関ヶ原からしばらくたったころ。
備後尾道に贋金作りの組織があった。
彼らが京都銀座の大黒屋常是のところで贋金を両替した。
3年後また、同じ連中が大黒屋に両替に来た。
そしてたちまち捕らえられた。
常是は両替の後、
それが贋金であることに気がつき、彼らをいつも警戒していたのだ。
これを取り調べたところ、福島正則の領地、尾道の者だと判明した。
京都所司代がその旨を福島に報告したところ、福島は怒った。
贋金作りを捕まえた大黒屋常是に対してである。
「常是は町人の分際で我が領民を絡め捕り、板倉殿に届けるとは憎き奴!」
贋金作りの銀貨は、およそ半分ほど、銅を混ぜた物だったと言う。
「ならば常是の吹いた銀の中に少しでも銅が混じっていれば、同じように磔にかけるべし!」
そう強硬に主張した。
当時の精錬技術では、銀の生成の過程でどうしても少量の銅が混じる。
福島はこれを知った上で、贋金作りを殺すなら、同じく常是も殺せ!
と言っているのだ。
常是は犯罪人を捕らえたことが何故にこれほど反発をされたのか、
理解できなかったが、
大大名である福島の機嫌を損ねるのも得策ではなく、
所司代との話し合いの上、福島側での処罰を条件に、
犯人の身柄を引き渡す事にした。
が、福島は贋金作りの身柄を引き取ると、処罰もせずに放免してしまった。
これには常是のみならず、京都所司代のメンツまで潰してしまった。
正則がやがて改易にいたる理由の一端が、垣間見られるお話。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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