関が原の戦いの後、安芸・備後四十九万八千石の大封を得た福島正則は、
積極的に人材を登用した。
その日も重臣の梶田出雲が、正則の前に仕官希望者を連れて来た、が。
「お前の連れて来る奴はアクの強いのが多いが、今日はまた格別じゃな・・・。」
「ははっ。」
小田孫兵衛と名乗るその男、歳は七十過ぎ、
身にまとうは使い古しの紙子羽織という有様だった。
「で、ですが殿!この孫兵衛どのは、今でこそ落ちぶれ果ててはおりますが、
かつては毛利家に仕えて侍の諸芸を修め、備中にて一城さえ任されたる者。
御広間の番等、つまらぬ職でも構いませぬ。
二百石、いや百五十石!
なにとぞ、なにとぞ騎馬武者として孫兵衛どのの顔が立つ程度に、
知行を与えてやって下され!
この通り!」
「よし、千石出そう。」
「!!?」
「何を驚く。お前今、『城主を勤めた』と言うたじゃろが。
そういう男はな、二百や三百石与えたところでものの役に立たん。
ケチケチせずに千石もポンとくれてやった方が、本領を発揮するものよ。」
正則の言葉に肝を潰した孫兵衛だったが、
一夜明けると使い古した紙子を脱ぎ捨て、
天晴れ一城の主の如き威風を取り戻していたという。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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