伏見に滞在中、松江の城主・堀尾忠晴がやってきた。
「松田の顔が見えませんが、どうしたのですか。」
正則は訊ねた。
かねてより正則と堀尾の家臣・松田重太夫は、懇意にしていたのである。
「ちょっと風邪気味なので大坂に置いてきました。」
堀尾は答える。
その晩遅くのことである。
突然松田の屋敷の門をけたたましく叩く音。
なにごとだろうかと松田が門を開けてみると、
伏見から一人で駈けつけた正則の姿があった。
松田は福島をもてなさなければならないと家の者に酒を買いに行かせた。
「さあ飲め。」
福島は松田に飲ませようとする。
「病気ですので。」
辞退する松田だが、福島の酒を拒める者などいるはずもない。
「ではこの線まで。」
松田は酒瓶に線を引くと、交互に一杯ずつ線を引いたところまで酒を飲んだ。
正則の酒をやんわりと抑える良い話。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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