福島正則が、ある時、聚楽第で伊達政宗とその臣・片倉小十郎に出くわした。
武辺でのし上がった正則は、死に装束や十字架を担いで罪を免れるなど、
小賢しさ満載の政宗を良く思っていない。
からかってやろうと出会い頭に、
「無鳥島の蝙蝠め。」
と罵倒した。
無鳥島の蝙蝠とは、鳥がいない島のコウモリ。
つまりは、奥州には碌な武将がいないから政宗如きコウモリでも、
勝ち上がってこれたという侮辱である。
これは織田信長が長曾我部元親に対して言った言葉とされるものを、
どこかで聞きかじって使ってみたかったのかもしれない。
意味が分からず???となるのを見て笑う心積もりだったのかもしれないが、
教養人の政宗では相手が悪い。意味はすぐに通じる。
政宗は聞き流したが、
後ろの片倉が黙っていなかった。
「福島殿は、ちんちくりんのりんりんでございますな。」
しかし、正則にはその意味が分からなかった。
悔しくて帰ってから学者まで呼んで調べさせたが、誰も分からない。
実はちんちくりんとは単に背の低い太閤秀吉の事であり、
りんりんは猿回しの猿の首についている鈴の事。
つまり片倉は主が鳥がいない島の蝙蝠なら、お前は猿の首についている鈴だろが、
この腰巾着が!という痛烈な皮肉を返してきたわけである。
しかし片倉小十郎といえば秀吉もスカウトした切れると評判の伊達の軍師。
こんな子供騙しのような事を言うとは誰も思わず、
しまいには異国の真理を表わす言葉ではという結論にまで至って、
とうとう意味が分からずじまいで正則は地団太を踏んで悔しがったという。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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