天下人となった秀吉は、ある日、故郷の尾張中村に立ち寄る機会があった。
地元の英雄の凱旋帰国に、村は沸き立ち大いなる歓待を受けた。
なじみだった者等と昔話に花を咲かせ上機嫌であったが、突然険しい顔になり、
「そういえば仁王はどうした、仁王を連れて来い!」と叫んだ。
仁王とは体が大きくガキ大将で、いつもいじめられていた幼馴染のあだ名である。
早速同行していた福島正則に見つけ次第引っ立ててくるよう命じた。
正則は秀吉の従兄弟かつ同郷なので、難なく居場所を見つけ出したが、
そこにいたのは、かつて仁王と呼ばれた姿とは程遠く、
やせ衰えたみすぼらしい老人であり、
かつての行いを恥じて秀吉の前に顔も出せず、
家族の者はお詫びと命乞いに地面に額をすりつけていた。
正則はその姿を見て哀れに思いそのまま立ち去り、陣に戻ると、
秀吉に、
「残念ながらかの者は一月ほど前に死んだそうです。」
と報告した。
秀吉は、
「そうか、自ら手打ちにしてやりたかったが残念だった。」
と言ったという。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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