名古屋城普請を命じられた清正は、普請に熱心に取り組んだ。
清正はよく普請のそばで行われる市場に顔をだし、市場まる事買う事がよくあった。
そして大きな仕事の前はここで買った品(酒、食料、日常品など)を大盤振る舞いしたという。
清正の故郷も近い事もあり大勢の人が集まり、
市民や他国の家臣も参加して、この宴会は毎回大騒ぎになっていた。
そして大工事当日は美少年5、6人に華美な小袖羽織を着せ、現場を見回った。
この少年達、余程見栄えがよかったのか、
「およびなけれど万松寺の華を、折りて一枝欲しうござる。」
(近くにある万松寺の美しい花になぞらえた美少年を褒める歌?)
この様な歌が流行り、美少年を一目見たいと大勢の女性が加藤家の屋敷に集まった。
清正は彼女等を屋敷に入れ、少年達を披露し酒を振舞い楽しんでいたという。
藤原惺窩も現場で清正等一行の工事を見ていた。
惺窩の従者は清正のあまりの放蕩振りに驚き、
従者、
「全く肥後殿は何を考えているのか。
このような事をしていては普請など上手くいく筈もなかろう。」
と呟いた。
それを聞いた惺窩は、
「それは全く見当違いな話だ。天下は徳川家というご時世だ。
他の者が徳川家に睨まれまいと規則通りに仕事をするのに、
肥後殿はあのように堂々とした振る舞いをしている。工務も決して遅れてはいまい。
それにな、ああやって現場で仲間を増やしておけば、いざという時に役に立つものだ。
このような事が出来るのは今や肥後殿だけだろう。
度量のある武士とは彼の様な者を言うのだ。
大御所様の御目に掛かるのもこれだけ観て十分わかる。」
と清正の度量に感服したそうだ。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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