加藤清正が、朝鮮へ出兵して帰るとき、
豊臣秀吉への土産にと、虎を生け獲りにして連れて帰りました。
しかし、大阪城内で危険な虎を飼うわけにはいきません。
そこで、広い 境内を持っていた伊和志津神社が選ばれ、
境内の隅の藪のなかで飼うことに。
ところが、虎はけものの肉は食べますが、その頃牛の肉など簡単に手に入りません。
しかたなく里の人たちは、 毎日犬を捕まえては虎に与えていました。
そのうち、伊孑志(いそし)の里には一匹の犬もいなくなってしまいました。
腹をすかした 虎が暴れ出しては大変です。
そこで虎の世話をしていた猟師は、
しかたなく自分の 飼っていた猟犬を餌にすることにした。
「すまんな。しかたないのだ。虎の餌になってくれ。」
と言い聞かせ、愛犬を虎のいる藪のなかに入れました。
ところが、その犬は一気に虎の喉笛にかぶりつき、離そうとはしません。
驚いたのは里の人達です。大切な預かり物の虎に、
もしものことがあっては大変です。
なんとか犬を 虎から離そうとしましたが、どうすることもできませんでした。
あわてた村の役人が大阪の奉行所へ駆け込んで、
事の次第を おそるおそる説明すると、
「なに、虎が犬にかぶりつかれておとなしくしているとォ。そんなものは虎ではない。
猫にでもなったのであろう。すておけ!」
と言われて跳んで帰ってみると、
虎はすでに犬に咬み殺されていました。
なんのおとがめも受けずに済んだ里人達は、
もう虎の餌の心配をすることも無くなり、喜びました。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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