関ヶ原の決戦後、西軍の首魁として捕らえられた石田三成、小西行長、安国寺恵瓊。
その彼らに家康より、見苦しい格好をさせてはならぬと、
新品の小袖二領づつが、下げ渡された。
先ず石田三成。
これを視て、「誰が送ってきたものか?」と問う。
番使が、「上様よりである。」と答えれば、
「上様とは、誰か?」
「家康様である。」
と言ったところ、
「太閤殿下が薨去されてより、上様とは秀頼公の事である!
一体何者が家康を上様と名付けたのか!?」
そう高笑いし、小袖に対して礼を述べるような事もなかった。
次に小西行長。
小袖を渡され、「私は今回の乱の、徳川殿へ敵対した随一であり、
本来このような懇志に預かるような立場では無いのに、
その御心底、あつく感謝いたす。」
そう言って、涙を浮かべた。
最後に安国寺恵瓊。
彼は小袖を出されても何も言わず、ただ涙を浮かべ、俯いているだけだった。
この安国寺は捕縛されて以来、朝晩の食事の際に、
逃走していたときに受けた傷に箸を突きたてようとして、
周りから止められる事たびたびであった。
『早く死にたいのであろう。』
人々は、そう語り合ったそうである。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
こちらもよろしく
ごきげんよう!