慶長二十年(1615)五月六日、大坂夏の陣。
道明寺方面で徳川軍の攻勢を持ちこたえた豊臣軍であったが、
若江・八尾が崩れたため、撤退することとなった。
そこで諸将は、毛利勝永の陣に集まり撤退を話し合った。
「クジで撤退する順番を決めよう。」
そう議決した。ところがここで、真田幸村が立ち上がった。
「クジには及ばない、ここは私が一人で敵を引き受ける。その間に皆様は撤退されよ。」
諸将はいきりたった。
たった今クジで順番を決めるとしたばかりではないか!
それを手前勝手にするとは、我々を馬鹿にしているのか!
しかし幸村も引かず、私だ、クジだと口論は続いた。
ここで、それまで黙っていた明石全登が口を開いた。
「こんなきりのない口論をしている場合か!
このままでは道明寺方面と、若江・八尾方面の徳川軍に、
挟み撃ちになりますぞ!
私はこんな所で死にたくはないので、最初に撤退させていただく!
後は最初に決めたとおりにしてくれ!」
そう言うとさっさと席を立った。
そこで幸村を含めた諸将も口論をやめ、クジを引いて撤退して行ったとか。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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