4万の島津勢に対し、高橋紹運が、
700人余りの兵と共に岩屋城に立てこもった時の事である。
家臣の杉山山城を「山城殿」と言って呼び寄せ、
「この城は後20日と持たないだろう。そこで頼みがある。」
と告げた。
主君からいきなり「殿」と呼ばれ、その理由が判らず山城が戸惑っていると、
「その方の家は先祖をたどれば我が高橋家より上の家柄。
今は立場が変わって主従となったが、
前々から同輩であった様な親しみを覚えていた。
最後の役目に当たり、成功したら領地を与えると言った所で絵空事でしかないので、
『殿』をつけて呼ばせてもらって、その方を軽んじていないという私の心を表し、
せめてもの褒美としたいのだ。」
と語り、
「そして頼みとは、死に臨んで心残りとならぬよう、
敵中にいる次男の直次を宝満城に送り届けるか、
さもなくば殺してくださらぬか。」
と頼んだのである。
紹運のこの心遣いに打たれた山城は、敵中を突破して無事に直次を、
宝満城へ連れて行ったという。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
こちらもよろしく

ごきげんよう!