久野冶左衛門の首☆ | げむおた街道をゆく

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関ヶ原が進行する中、

九州においては黒田如水と、西軍の大友義統の軍が対峙していた。

そんな折、大友の本陣より、

従者10人ばかりを引き連れた武者が一人出てきた。
彼は箱のようなものを持ち、黒田軍に矢留めを求めた。

黒田の諸隊、これを怪しんだが、武者は、

「黒田伯耆殿の陣所に案内していただきたい。」

と、要求をする。そこで黒田伯耆の陣所へと連れて行くと、武者、伯耆に、

「義統様よりの言付を申し上げます。
昨日の合戦の折、我々はこちらの隊の、

久野冶左衛門殿を討ち取りました。
その、久野殿のご親族が、まだこちらにいらっしゃるとお聞きしました。
そこで、せめて御遺骸だけでもお渡ししたいと、

ここにその首を持って参ったのです。
どうぞ、これをお受け取りいただきたい。」

と、その首の入った桶を、差し出した。

伯耆はこれに、
「久野の首を送っていただいた事、そのお心に感謝いたします。」
そう言って首桶を受け取り、使者を帰した。
その後、首桶より冶左衛門の首を出した。

冶左衛門の首は、綺麗に洗われ、髪を結い、香も炊きこめられていた。
額には刀傷が二箇所あった。
伯耆はそれを見るとたちまち涙を流した。

その場にいた彼の配下の者達も、皆、泣いた。

その場に、冶左衛門の異母弟、久野五郎兵衛もいた。
冶左衛門と五郎兵衛は、母は違っても、非常に仲の良い兄弟であった。
五郎兵衛はその首を膝の上に抱えて嗚咽した。

そして、突然立ち上がると馬に乗って駆け出そうとする。

人々慌てて馬の口に縋り、「何所に行くつもりか!?」と問うと、

「これから敵陣に駆け入り、討死するのだ!」

そう叫び、あくまで馬を出そうとする。そこで馬の口に縋った者達は、
「お前は愁嘆に迷い、君臣の道を忘れたのか!?」
そう言って五郎兵衛を責めた。

 

これに五郎兵衛も、その道理に服し、馬を降り立ち帰った。

と言うことである。
 

 

 

 

 

ごきげんよう!