秀吉の四国攻めの先鋒大将には、宇喜多秀家と仙石秀久が選ばれたが、
軍監として黒田官兵衛が付けられた。
讃岐から上陸した彼らは順調に攻略を進め、植田城までやって来た。
家臣「ここまで来たら、あのような小城、ひともみに潰してしまいましょうぞ!」
官兵衛「・・・いや、まずはこの辺りの地形を調べよ。」
調査の報告を受けた官兵衛は、結論を下した。
官兵衛「よし、長宗我部のいる阿波へ急ぐぞ。あのような小城、捨て置けい。」
家臣「 ? 放っておけば、城から追撃を受けてしまいませぬか?」
官兵衛「あの城から追っ手など出るものか。そもそも、あんな所に城のある訳はないのだ。」
家臣「 ????? 」
後年、長宗我部元親は語った。
「植田城は、オトリの城だった。秀吉軍が調子に乗って攻めかかれば、
あの山間の地形では大軍は行動が制限される。
そこを讃岐と阿波の国境に置いた本隊で夜襲し、一泡吹かせるはずだった。
いや、大将が宇喜多や仙石だけならば、そうなっていただろう。
黒田官兵衛などという歴戦の古兵がいたので、
わしの策は水の泡になってしまった・・・。」
(黒田家譜より)
関ヶ原の戦の際、九州にいた黒田官兵衛・入道して如水は、
西軍の大友義統に攻められた豊後杵築城の救援に向かった。
途中の山に、人影らしきものが見えた。
如水「あれは、敵の物見ではないか? 騎馬の者、誰か見て参れ!」
しかし、黒田家本隊は嫡子・長政に預け、
ここにいるのは如水が中津で雇った寄せ集めの兵ばかり。
まともな馬に乗っている者など、一人もいなかった。
皆が顔を見合わせていると、田代彦助という者が進み出た。
「拙者が見て参ります。」
如水「お前は徒歩ではないか!それならオレの予備の馬を貸してやる、これで行け。」
彦助「ありがたい仰せですが、ここは殿の万が一を考え、徒歩で行きます。」
如水「あれが敵なら、必ず伏兵が隠れている。ならば、お前の身が心配だ。
ここは、やはり馬で行け。」
彦助「もったいないお言葉・・・伏兵がいれば拙者は討たれましょうが、
如水様のために
捨てる命ならば、惜しくはありませぬ。」
彦助はそう言って、如水の馬にまたがった。
如水「よいか、伏兵がいたら、すぐに帰れ。そういう時は生きて戻り、
報告するのが本当の手柄ぞ。わかったな!」
彦助はうなずき、人影に向かった。
人影と見えたのは、五輪塔に蓑が掛けられており、
風で舞い上がって見え隠れしていただけだった。
如水一行は安心して軍を進めた。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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