織田信長が、槇島の足利義昭を攻めた折、
連日の暴雨によって宇治川は増水して、
渡ることも困難であったが、信長が水のほとりに立って、
「先にこの河を渡るのは誰だ!古の梶原も佐々木も鬼神ではないぞ!」
と、言い終わらないうちに上流より一騎が、
流れを乱して宇治川を渡った。
信長は、
「必ず梶川弥三郎だ、余人ではない! 天晴れな勇士をむざむざ敵に討たせるな!」
と命じ、大勢が競ってこれに続いてついに岸に上り勝利を得た。
初め梶川は博奕を好んで人々に除け者にされたが、
信長は独りその勇を愛し、
「急難のある時はこれで功を立てよ。」
と名馬を与えた。
梶川は感涙して、
「この馬で、先駆けできなければ生きては還らない。」
と自ら誓い、ここに功を立てたのだ。
大槻磐渓曰く、
「宇治川の先登について世の人は梶原と佐々木だけを知り、
梶川を知る者は少ない。
梶原、佐々木は馬を並べて先陣を争ったわけだが、
さて梶川の最も勇壮な単騎直進に、
及ぶのはどちらであろうか。
どちらも及ぶわけがないのだ。」
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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