豊臣秀吉のもとに、毛利輝元が、初めて出仕したときのこと。
毛利は天下第一の大名であり。
中国は残らず彼の威風に属していた。
然らば、秀吉も定めて礼を正し、威厳に満ちた対面をするだろうと、
人々はそう考えていた。
ところが、秀吉は輝元を対面所に暫く待たせ、
その後、帯を手に持ち、まるで形式張らない格好で、
女の禿(かむろ)に腰刀をもたせで現れると、
その姿のまま輝元に対面し、
直に彼の手を取って立たせ、古のことなど色々と物語しつつ、
大阪城内の座敷を一つ一つ見せて周り、
それから天守へと上がり、
大阪の四方の繁栄を見せつけ、その場で刀を与えた。
それから座敷へと下り、庭に馬を曳かせた。
秀吉はその馬に乗り、輝元に馬の口を取らせた。
その後、馬は輝元に与えられた。
これにより毛利は、尽く秀吉の恩顧、度量に平伏し、
あるいは親しみ、あるいは恐れたという。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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