信長の、ある年の元旦の事。
大広間に雑煮の膳が並べられたのを見ていると、
よりにもよって信長の膳だけ、
箸が片方だけしか置いていないのを発見。
「これは、どういうことだ?」
見る見るうちに機嫌が悪化する信長。
硬直する家臣一同、凍てつく空気、その時である。
末席にいた、当時まだ木下藤吉郎と呼ばれた秀吉が進み出た。
「やあやあ!これはめでたい!上様が今年から、
諸国を片はしに取られると言う吉兆でございますぞ!
ああ、めでたやめでたや!」
信長、機嫌を直す。
家臣一同、秀吉に深く深く感謝する。
信長の、また別の年の元旦の事。
正月のご挨拶に諸大名が出仕してみると、信長の機嫌がまたえらく悪い。
「昨夜、このような夢を見た。
どこかへの出陣で、具足をつけて馬に乗ったところ、
その馬の足が四本とも突然折れて、
わしは地面に投げ出された。
これはいかなる兆しであるか?」
一同、それは凶兆だろうと思うが、
そんな事を言えば大変な事になると思い押し黙る。
その沈黙に、ますます機嫌の悪くなっていく信長。
硬直する諸大名。凍りつく大広間。その時である。
またも木下藤吉郎進み出て、
「やあやあ!これはめでたい!
その夢はすなわち、合戦に出るたびに、
勝ち(徒歩)武者の武名をお上げになるお告げでございますぞ!
いやはや千秋万歳千秋万歳!」
信長、機嫌を直す。
諸大名再び秀吉に深く感謝する。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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