前田利家・利長親子が、豊臣秀吉により、伏見城下、
宇治川の堤防の普請を命ぜられた時のことである。
前田利家は、
『この宇治川の堤防普請は末代までの聞こえとなる!』
と大いに満足し、張り切っていたそうだ。
さて、前田家は堤防作りのため土俵を積むのだが、
この時、利家の方の家中では、あらかじめ集めておいた土俵が少なく、
必要最低限しかなかったらしい。
利家のところだけにその辺もケチッたか?
と、その日の暮方、急に川の水位が上がり始めた。
このままでは土俵を越えて水が溢れ、それまで二日間の工事を台無しにしてしまう!
利家は土俵を次々と積ませた。
が、用意していた土俵が少なかったためたちまち底を付き、
しかたなく利長のところの土俵まで取って行こうとした。
だがここに利長の家臣たちが立ちふさがる。
「この土俵は我らの方で使う物!勝手に取っていかれては困る!」
考えて見れば、利家のところで水位が上がっているということは、
利長の担当箇所でも当然水位は上がっており、
土俵が緊急に必要となっているのだ。
たとえ利家のところより余裕があったにしても、
簡単に渡せるものではないのである。
が、これに前田利家は激怒。
「お前たちが邪魔をするか!コラー!」
と、持っていた杖を振り回しながら、
土俵の引渡しを拒否した利長の家臣たちを追い回したという。
この事件により利家と利長は何かにつけ対立し合うように成り、
両者の家臣たちも甚だ困り果て、
最終的にこのことを聞いた秀吉が出向いて両者を和解させる、
という事にまでなった。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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