末森城の戦いの時、
前田利家は素早く末森城を後援したために、
佐々成政は敗軍した。
この戦いで、本多正重は武者修行をして利家の備えを借りていたが、
利家が士卒を制して隊列を固めているのを見ると、
馬を乗り寄せて声高に、
「恐れながら勝ちに乗るとは今ですぞ! 敵は崩れて一足も返しません!
御下知あるべき所なり!」
と言った。
しかし、利家は、
「お前に何が分かる!」
と大いに罵って城に入り兵を収めた。
佐々軍が引いて後、利家は子息利長に話すべきことがあると、
同道して七尾に帰った。
「私が正重の諌めを用いなかったのは思慮があったからだ。
およそ武者修行の者は、
自分の功を立てるのを目的とし本当の忠がない。
あれは自分の一言で敵を追わせて、
利を得たのだと他家の誉れにしようとしたのだ。
もし私が負けたとしても正重の負けにはならないし、
仮合の徒である正重にとって損にもならない。
その上、道の往来を考えた時に後援の兵が三千から四千程度だと分かるところを、
その推測ができなかったのは成政の失敗だった。
一旦は不意にあって敗れ去るとしても、
成政の志なら後援の兵が少ないと知れば、
私が追わなくても兵を返してきたことだろう。
ましてや急に追ったなら総返しにされた。
そうなれば味方の負けは必定であろう。
だから追わなかったのだ。」
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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