ある時、家康公が山中を行軍されていた際、
鐙に足をかけない者たちをお見かけになった。
家康公は、丹沢久助を呼んで訳をお尋ねになった。
丹沢は、
「馬が暴れたとき、
ころりと落馬すれば人も馬も大して手負いしないものです。
しかし、馬にしがみつけば人は引きずられ、或いは踏みつけられ、
馬はますます狂乱して手がつけられなくなります。
ましてこのような山道では小勢の攻撃でも、
そのようなことになりやすく、
そうなれば味方に与える損害は大きなものになります。
そのため鐙に足をかけさせないのです。」
と答えた。
家康公は、
「これこそ用心というべきものだ。」
とお褒めになり、
「鐙用いぬ者の落馬を笑ってはならない。」
とおっしゃった。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
こちらもよろしく

ごきげんよう!