ある夜話に、徳川家康が、本多豊後守にこう語った。
「大将たる者は、物事に臨んで大器量を旨とすべきである。
心に余裕を持ち、大節さえ誤らなければ、他の細かい事は忘れてよい。
心が、あまりにも鋭いと、人との交わりが難しくなる。
獣には人の役に立つ牛馬もいるし、逆に害をなす虎狼もいるのだ。
人間の悪い点も時には役に立つ。
信玄や謙信は、疑心から家臣を滅ぼした。
しかし、それは良くない事だ。
わしの父が病気の時、一族や譜代の多くの者が敵方や日和見に回り、
幼いわしを助けなかった。
ところがわしに武運が回ってくると、みなそのことを忘れたように集まって軍忠に励んだ。
わしも昔のことを知らぬ顔で出迎えた。
信玄や謙信のように、わしは昔のことを根に持たない。
それが大将にとって、大切な器量である。」
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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