権現様の癇癪☆ | げむおた街道をゆく

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慶長二十年四月六日、家康は駿府を立った。


徳川義直の婚儀で尾張を訪ねたついでに、上洛して大坂方を討伐する企てだった。


そのころ、去年今年と両度の出陣で旗本は困窮していたので、

「少しは金銀でも下さるだろうか。」

と各々が愚痴を言っていたところ、本多正純が内々に耳にし、

「もっともなことだ。

おあちゃの局様が御前でよろしく沙汰されるべきだ。

そのときに我らも言上に及ぼう。」

と内談した。


あるとき家康が御咄の間に出てきて、老中を召し、いろいろ話をした。
あちゃは、

「笹ちまきの風味がよくございます。」

と三方に載せて御前へ差し出し、

「去年の御出陣も首尾よく終わり、誠にめでたきことにございます。

御婚儀も万端奉祝も終わり、諸侍に何か拝領されてはいかがでしょうか。」
 

すると家康は、にわかに機嫌を損ね、

 

「言いたいことは分かるが、

いまさら金銀を与えれば敵に恐怖したのかと万民が口にするだろう。

金銀を与えなかったからといって逼迫して供もできない輩は好きにすればよい。

わし一人でも上洛するわ。

長篠のときも味方の軍勢を頼らず信長の軍勢を先に立てて勝利を遂げた。

あるいは小田原攻めも粉骨砕身し、

関ヶ原のときだって、人の力を頼らず計策を以って勝利したのじゃ。」
 

これらの話を引いて、もっての他に激怒した。


あちゃは言葉なく、

「めでたしめでたし。」

とばかり口に出して退出した。


「勿論本多上野介其外の面面、言語を発っせざるなり。」

 

 

 

戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。 

 

 

 

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→ どうする家康・異聞、目次

 

 

 

 

 

ごきげんよう!