大坂の陣のとき、徳川家康は息子の徳川義直に頭黒に白葵の丸を付けた旗五本を与えた。
ところが弟の頼宣は将軍秀忠と同じ黒紋を付けた旗七本だった。
この差別が義直の生母於亀には気に入らなかった。
彼女は家康に泣きながら言った。
「あなたはなんと無情なお方でしょう。義直は御兄君であるのに、
弟君の頼宣様だけ将軍様と同じ御旗ではありませんか。
何故このようなことをなさるのか。」
すると家康は於亀をこうなだめたという。
「武家には総領の庶子、庶子の総領があるのだ。
かつて信康が死んだ後に、
秀康を立てるはずだったが、秀康には同腹の弟がおらぬ。
しかし秀忠には忠吉がおったから、わしの後継ぎにした。
もし将軍になにかあった時、義直にはそうした弟がいないが、
頼宣には頼房がおる。
よって天下の総領は頼宣なのだ。
義直と頼宣の格には優劣はない。だから二人は同時に縦四位下に叙任された。
二人の家に優劣はない。だから弟のいる頼宣が天下の総領である。
これが道理ではないか?」
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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