武州忍城にて、徳川家康が、伊奈忠次に栗の実を与えた。
「しかし、この栗の実が実を結ぶほどに成長して、
その実を召し上がれるようになる頃には、わが君はどれ程の御長寿であろうか。」
それから年月を経て栗の木は実を結ぶようになり、
遂には家康の供御となったので、
忠次は、家康の思慮深さと、目先の利益に捉われない心に感銘を受けた。
「昔、八、九十ほどの老人が木を植えるのを見て、
近くにいた者が
『いま木を植えたところで、いつあなたの役に立つのか。』
と嘲笑ったところ、
老人が、
『お前のような、たわけ者を、父や祖父にもったゆえ、一生、木に難儀しておる。』
と言ったとかいう話があったな。
やはり、何であろうと、良いと思ったことは、
老いたとしても、やっておくべきなのだ。」
と、家康は、人々に語ったという。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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