慶次が、京の室町通りを歩いていると、呉服だなの店先で、
大柄の太った主人が片足を店先へ投げ出し、脇の者と雑談している。
積まれた反物の間にある主人の足は、買物しようとする人にとって邪魔だった。
慶次は店に入ると、
「おいオヤジ、この足も売物だろうな? この足買いたいのだ。」
と言った。
主人は、へらへら笑いながら、
「百貫で売り申す。」
慶次ニヤリと笑って、
「よし、買った!」
慶次の豪腕に膝を抑え付けられた主人は、足を抜こうにも抜けずにいる。
慶次は主人に、
「この足を百貫文で買ったのだ。
おれはこの脚を斬ってさらしてやる。
この迷惑な足、百貫文也と立札たててなぁ。」
この言葉に主人は身体を震わせ、ついに泣き喚いた。
群れている人は誰も助けようとしない。
騒ぎを聞きつけて町役人や町奉行もかけつけやっと、
町中の詫び言で一件落着となった。
それ以来、京では足を投げ出すことは禁制になったという。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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