信長の旗☆ | げむおた街道をゆく

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奇襲で信長の旗を奪った石山勢は、

「信長は降伏したぞ。」

と叫びながら、石山へ帰って行った。

 

その途中、道の脇から男が現れて兵をなぎ倒し、
旗を奪ってどこかへ去って行った。

 

怒って追いかけようとする兵たちを、大将・粟津右近は制した。

「甲冑を着たこの軍勢の中に、平服でただ一人駆け入り、

旗を奪うなど、よもや人間ではあるまい。」

佐久間信盛の軍が信長を探していると、

道端に一人の男がおり、
奪われた旗を持っていた。
「そなたは何者じゃ、なぜその旗を持っておる。」
 

「俺は敵でも味方でもない、ただの三界流転の浪人だ。

信長が降参したなどと嘲笑するのを見るに堪えず、

奪い返し、織田方へ返そうと思ったまで。」
男は旗を返した。
 

「かたじけない。わしは織田家の将・佐久間信盛じゃ。」
 

「おお佐久間殿か、俺だ、前田慶次郎だ。」
 

佐久間は驚いて、月明かりを頼りによく見ると、たしかに慶次郎であった。
 

「お主は理由もなく出奔したではないか。

なぜここへ?

しかし今回の働き見事じゃ。

殿も喜ぶだろう。

帰参するならわしがとりなそう。」
 

慶次郎は、

「理由なくとは佐久間殿の言葉とも思えぬ。

前田の家は嫡男の俺ではなく利家に渡った。

何の面目があって国にとどまるのか。

俺は意地を守って浪人となっただけ。

今帰参するのは、すでに治まった叔父の家を奪うようなものじゃ。

望みはござらぬ。

旗は佐久間殿の手柄とせよ。」

と笑い、姿を消した。

佐久間は信長に出会うと、慶次郎の件を話した。

信長も慶次郎のことは武勇の士として聞いていたので、

姿を消したことを残念がった。

 

 

 

戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。

 

 

 

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ごきげんよう!