佐竹家が、秋田に移った後のこと。
ご隠居の義重は、六郷というところに住んでいた。
ある日、その義重が所用で久保田城下に滞在した。
義宣から、ご機嫌伺いの使者として、桐沢久右衛門という者が派遣された。
近況など話すうちに、久右衛門から、
義宣が見事な白鷹を手に入れたという話が出た。
「ほう、わしはかつて常陸で百万石にも近い領地を治めたが、
白い鷹は見たこともない、義宣は果報者のようだ。」
義重は感心したように言った。
この親子、相当の鷹狩好きである。
それを知る久右衛門は、「では明日お借りして参りましょう。」と約束した。
そして翌日、久右衛門は鷹を借りると、再び義重を訪ねた。
「ほう、これは見事。」
義重は鷹を腕に乗せ、眺めていたが、やがて目からはらはらと涙を流した。
思わぬ反応に久右衛門は動揺し、
つい「献上いたします。」と言って鷹を置いて帰ってしまった。
さて、当然ながら義宣は怒った。
御前に呼び出された久右衛門がちらと伺うと、
義宣の顔は憤激に染まっている。
久右衛門、覚悟を決した。
申し開きはせず、手討ちを望んで首を差し伸べた。
義宣は、上座からつくづくとその態度を見つめていたが、
その場では何も沙汰せず、奥へと下がった。
三日後、久右衛門へ改めて命が下った。
久右衛門を勘定奉行に任ずるという、義宣の上意だった。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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