佐竹義宣公が、転封先の久保田にようやく城を築いた頃。
穴門橋前に、浅原甚之丞という者が住んでいた。
ある日、彼は同僚が緞子の半襟を掛けているのを見つけ、それを咎めた。
「おい、それ、規則違反だぞ!」
「んだよ、ありあわせの古いやつだからいいんだよ!」
些細な事から口論となり、二の丸にある安楽寺の前で本格的な大喧嘩。
松下門の坂道まで来たとき、とうとう甚之丞は同僚を殺してしまった。
さて、ここに異変に気付いた者がいる。
城主の佐竹義宣その人である。
たまたま御隅櫓に昼寝に来ていた彼は、
血の付いた刀を引っさげて帰っていく甚之丞を発見。
幸い、すぐ向かいが渋江内膳政光の屋敷である。
大声には自信のある義宣公、事態を知らせようと内膳宅に向かって声を張り上げた。
「内膳!内膳!」
が、あいにく内膳は留守。
代わりに梅津半衛門憲忠がいた。
内膳宅の向かいが半右衛門宅で、
これまたたまたま馬の爪髪をこしらえに来ていたのである。
「え、なに? 殿の声?
一体どこから…って、櫓から!?どんだけでかい声出せるの!」
半右衛門は大急ぎで長刀を持って駆けつけ、自宅に戻っていた甚之丞をバッサリ。
飛び掛ってきた甚之丞の弟も、同じくバッサリ。
二人の首を手に引きあげてきたそうである。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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