横尾内蔵之丞は、天下無双の槍の使い手で、
直茂公から大変気に入られていた。
直茂公は、お孫の元茂様に、
『内蔵之丞が若い時の武勇をお前にも見せたかった。
誠に惚れ惚れとする武士であったぞ。』
と語り聞かせるくらいであったのだ。
内蔵之丞も、直茂公のお心を有り難く感じ、
公が亡くなられたときは、
一番に腹を切りお供をしますと約束の誓紙を差し上げていた。
ところがある時、内蔵之丞が百姓と揉め事を起こし裁判沙汰になった。
この裁判によって内蔵之丞のほうに無理があることがわかり、
裁判は内蔵之丞の負けということになった。
これに内蔵之丞はひどく腹を立て、
『百姓に味方され見捨てられた拙者が、
どうして殿の後を追いましょうか。
差し上げていた誓紙をお返しください。』
と申し上げたところ、
直茂公は、
『一方が良ければ、一方が悪くなる。
武勇は良いが、世間知らずが良くない。惜しいことだ。』
と、つぶやき誓紙を返されたとのことである。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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