鍋島直茂が絵師を呼び、慶長の役は蔚山城の戦いで勇戦する加藤清正の、
等身大の絵を描かせた。
「殿、下絵ができました。これでいかがですかな?」
「どれどれ………いや、ダメだ。加藤殿の姿を、もっと大きく描け。」
「はぁ……では、これぐらいですかな?」
「まだまだ。今一層、丈高くせよ。」
「ではこれぐらい?」
「まだまだ、もう少し大きくせよ。」
こんなやり取りが数刻も続いて、
ようやく直茂は「うむ、良く似ておる。」と納得した。
「いやいや殿、これもう人間じゃないでしょ?!」
清正の姿は、城門ほどの背丈に描かれていた。
「何を言う!わしは、かの蔚山の戦いでは援兵の第一陣を仰せつかり、
朝鮮・明軍を押しのけ掻き分け、ようやく城門に近づいた。
加藤殿も、このような敵に囲まれて久しく城に篭もり、
苦しみ衰えているであろうと思っておったが、
かの御仁は我らの姿を認めるや否や、喜び勇んで城門を開き、
みずから先を切って敵に駆け入ったわ。
鬼神の天より降るとはまさにあの事。
その意気、我らをも圧し、その姿、門一杯に見えたものよ。」
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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