鍋島直茂の家臣が、街の噂を主君に伝えた。
「世間では『太閤当時の名将と言えば、小早川隆景と鍋島直茂』と申しておりますぞ!」
喜ぶ家臣に、直茂は答えた。
「何をもってワシと隆景を並べる?いいか、あれは確か・・・。」
小田原攻めの翌年、秀吉が諸大名を集めて言った。
「その方らの苦労にもっと報いてやりたいが、
いかんせん日本は小国で土地が足りぬ。
この上は高麗に攻め入り、
唐天竺を切り取り、末代までの物語にせん!
その方らにも思う存分に知行をくれてやろう!どうだ!?」
あまりにも突然の言葉に、
「乱心か?!」
と思う者までおり、一人として返答できずにいると、
小早川隆景が進み出た。
「いや、ごもっとも!こんなこともあろうかと・・・。」
持って来た絵図面を広げた隆景は、
軍議でもあるかのように
「赤塗りの国には、この道より討ち入り・・・その後、白い国へ抜けると・・・。」
と、秀吉に解説まで始めた。
その場にいた鍋島直茂は、秀吉の機嫌を損ねるのを恐れ黙っていたが、
(知将と名高い隆景が、絵空事でお追従とは!)と、あきれ果てる思いだった。
「・・・ところが、いざ海を渡ってみれば、
話半分に聞いていた隆景の解説そのままだった。
どうやって調べ上げたのか?
あるいはあの詳しさは、みずから渡海していたか?
いずれにせよ、隆景こそワシなど及びもつかぬ、天下の名人よ。」
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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