ある時、一人の山伏が、黒田長政に面会を許され、こう言った。
「昨晩、黒田様が五ヶ国の太守となった夢を見ました。
お目通りが許されるタイミングでこのような夢を見たとは、
間違いなく吉兆の霊夢かと思われます。」
それに対して長政、
「おおそうか、そりゃ目出度い!
そなたの夢の通り、五ヶ国を拝領したら必ずや祝儀を与えよう!」
と応え、その場では何も与えず、面会は終わった。
数日後……
「昨晩、鍋島様が五ヶ国の太守となった夢を見ました。
お目通りが許されるタイミングでこのような夢を見たとは、
間違いなく吉兆の霊夢かと思われます。」
佐賀城で同じ事を言う山伏の姿が。
その言葉を聞いた鍋島直茂、
「そりゃ良い夢だ!真に目出度い!
おい、祝儀として金を包んでやれ!」
と、金百疋を山伏に与えたという。
「殿……よろしかったので?あの山伏、
筑前の黒田家でも同じ事を言っていたと聞いておりますが……?」
山伏が退出した後、恐る恐る直茂に疑問をぶつける家臣。
「よいのだ。我々が弓矢を取って生活を立てるように、
皆それぞれの方法で生活を立てねばならんのだ。
あの山伏は、
あのような事を言って金を施してもらわねば生きて行けぬのだろう?
あの金子はあ奴に恵んでやったと思えばよい。」
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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