鍋島直茂が、船で肥前に帰還した時の事である。
海が大荒れとなって、船は激しく揺れて梶までも壊れてしまった。
元々磯の匂いをかいだだけで食事も出来なくなるほどの船嫌いだった直茂は、
すっかり平常心を無くし、
「天下に名の知られた自分が、丸腰の死体で見つかっては子孫の恥だ。」
と言って、家臣に刀を渡す様に命じた。
しかし、直茂が自刃するつもりだと察した家臣は命令を聞こうとせず、
そうこうしている内に波は静まり直茂も落ち着きを取り戻した。
後に一部始終を聞いた正室の陽泰院は涙を流してこの家臣に感謝し、
直茂も、
「あの時は不届きな奴だと思ったが、今となれば大功であったな。」
と褒めたという。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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