鍋島直茂が息子の勝茂と共に、毛利輝元の屋敷に招待された時の事である。
宴席で勝茂は輝元に、
「勝茂殿、この場で謡(うたい)を披露して貰えぬか?」
と求められたが、
「・・・・・・。」
全く謡おうとはしなかった。
見かねた直茂が
「某が代わりに謡いまする!!」
と謡い出した為、
その場はしらけずにすんだものの、
屋敷に戻った勝茂は、
「父上の謡が可笑しくてしょうがなかった。」
と母の陽泰院に語ったのである。
すると陽泰院は、
「そなたが謡わないからじゃ。」
と叱責し、直茂も家臣を通じて、
「こういう時の為に稽古しているのだから、以後あの様な事がない様にせよ。」
とたしなめたのだった。
息子のフォローにまわった直茂のいい話。
ちなみに、勝茂には笑われた直茂だったが、輝元からは、
「田舎者だと思っていたが、礼儀を知っている。」
と賞賛されたという。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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