水を欲す☆ | げむおた街道をゆく

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信長の野望、司馬遼太郎、大河ドラマが大好きです。なんちゃってガンダムヲタでもあります。どうぞよろしく。

 

ある時、鍋島直茂が領内の下村という地で鷹狩りを行った。
 

早朝から夢中で山野を駆け回った為、すっかり喉がカラカラになってしまった直茂。
一軒の寺を見つけたので、喜んでそこに駆け込んだ。

「突然のコトで申し訳ないのだが、喉が渇いてしまって難儀している。

水を頂いても良いだろうか?」

囲炉裏で火を炊いていた住職は快くそれに応じ、お湯を少量碗に掬い、

水を注して直茂に差し出した。

直茂はそれを一気に飲み干し、「もう一杯!」とお替りを要求。
住職も笑いながら、再び椀を差し出す。

一杯目で人心地ついた直茂は、ゆっくりとお湯を飲み干す。

「……住職」
「はい、何でしょう?」
「今し方頂いたお湯のコトだが、一杯目と二杯目とでお湯の温度を変えたのは、

ワザとなのだろうか?」
「ええ、勿論。水を求めて駆け込んできた方に、

熱いお湯など差し出しては口を火傷してしまいますからな。」

そう、住職はお湯に注す水の量を変え、

一杯目は一気に飲み干せる程度のぬるま湯を、
二杯目は身体を温めるように熱い湯を差し出したのである。

「ふむ……住職、勝手なコトを言うようだが、還俗せんか?」
「は!? 一体何を……?」
「還俗して、家臣として私に力を貸して欲しい。頼む!」

直茂はこの住職の気遣いに感じ入り、自らの家臣として出仕するコトを望んだ。
芳叔と号したこの僧侶、やがて還俗して下村生運を名乗り、

直茂の望み通り、彼に仕えるコトとなる。

 

 

 

戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。

 

 

 

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→ 佐賀の雄・鍋島直茂、目次

 

 

 

 

 

ごきげんよう!